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【事例をご紹介】退職代行会社や退職代行弁護士から退職連絡が来たときの注意点

【事例をご紹介】退職代行会社や退職代行弁護士から退職連絡が来たときの注意点

一時期に流行った退職代行が、今年に入って再び増えています。

退職代行会社から退職に関する書類が送られてきたときには、どのように対応すればいいのでしょうか。

また近年では退職代行弁護士から退職に関する書類が送られてくるケースも増えています。

おのおのの対応について詳しくお伝えしていきましょう。

従業員のことで、少しでも「あれ?どうすればいいんだろう?」「問題だなぁ」と思ったら、すぐに顧問社労士に相談してください。

【事例1】退職代行会社から退職連絡が来たときの選択肢と結末について

「退職代行会社」から、従業員の退職届が届いたケースをご紹介します。

その届けには、一身上の都合により指定の退職日を持って退職するという旨が記載されています。

また、本日より出勤できないために、退職日までは有給休暇、もしくは欠勤扱いにしてくださいといった条件まで記されています。

さらにこの内容についての連絡は本人ではなく、退職代行業者にするように指定されています。

【対応①】そのまま退職手続きを取った場合

退職代行会社、胡散臭いなぁ。
でも、まぁ、本人に連絡するなって書いてあるので、
退職代行会社と連絡を取って、退職手続きをしてしまおう。


上記にように胡散臭いと思っていても、届出の内容通りに退職手続きを粛々と進めた場合には、次のような結末が待っていました。

退職届の通りに退職手続きを取った後、10日後に本人から連絡がありました。

病気で休んでいたが、復帰できるようになったので、復帰したいとのことです。

驚いた会社は、退職代行会社からの通知があったことを本人に説明しましたが、本人は知らない、勝手にやられたものだ、と主張しています。

会社としては退職手続きをすでに取っているために復帰を拒否し続けていたところ、本人から裁判を起こされてしまうことになりました。

会社として退職代行会社に本人の意思によるものかを確認しなかったとして敗訴となってしまい、職場に戻ってきてしまうことになったのです。

【対応②】本人に退職の意思を確認した場合

退職代行会社、胡散臭いなぁ。
本当に本人の意思によるものなのだろうか。
一度、本人に退職の意思を確認してみよう。


退職届にはやり取りについて退職代行会社に連絡するように記載されていましたが、本当に本人の意思によるものなのかどうか確認してみました。

すると、結末は次のようになりました。

確認のための本人に連絡を取っていたところ、電話に出なかったので留守電に、退職を承認することを残しています。

その後も何度か電話連絡した結果、しばらくして本人と電話で話をすることができました。

退職であることの意思を確認することができましたので、退職手続きを行っています。その後、特に問題なく現在に至っています。

【事例2】弁護士事務所から退職連絡が来たときの選択肢と結末について

次に「弁護士事務所」から、従業員の退職届が届いたケースをご紹介します。

その届けには、自己都合で退職日を持って退職するという旨が記載されています。

また、退職日までの機関については有給休暇を消化するといった内容になっています。

さらに退職の手続きについては本人ではなく、弁護士事務所が窓口として対応すると指定されています。

【対応①】弁護士に連絡せず本人に確認を取った場合

本人に連絡し「どうして弁護士なんかに頼んだんだ!」
「退職くらい自分で言え!」と怒鳴りちらした。


「退職の意思くらいは自分の口で」と考える方は多いのではないでしょうか。

そのように考えて、弁護士ではなく本人に連絡し、ついカッとなって怒鳴り散らしてしまいました。

すると、結末は次のようになりました。

この電話でのやり取りは録音されていて、その後、パワハラによって精神的に病んでしまったとして慰謝料100万円の追加請求がなされてしまいました。

また、それでも会社が承認しないでいたところ、その後、弁護士から退職を撤回する旨の通知が来ることに。

それにより、本人を辞めさせることができなくなり、雇い続けざるを得なくなってしまいました。

【対応②】弁護士に連絡して手続きを行った場

弁護士に連絡し、退職を承認する旨を伝え、
弁護士を窓口として退職手続きを進めた。


届出の内容通りに弁護士に連絡することにしました。

弁護士とはスムーズにやりとりをすることができ、本人は円満に会社を退職するに至っています。

その後、特に問題も起きることはありませんでした。

【解説】退職代行会社や退職代行弁護士から退職連絡が来たときの注意点

「退職代行会社」とは、会社を辞めたいけれども、自分では直接、退職の意向を伝えられない、あるいは引き留められるのが嫌といった労働者に代わり、退職の手続きを代行する企業のことを指しています。

退職代行を行うのは、退職代行会社だけではなく、最近では退職代行弁護士も現れており、労働に精通した弁護士が担当しています。

上記の事例をご覧になってもお分かりの通り、退職代行会社と退職代行弁護士では必要な対応が異なります。

そもそも退職とはどのようなものなのか、また実務上の対応についてお伝えしていきましょう。

退職の意思表示とは

「退職の意思表示」について法律の観点から見てみたいと思います。

退職には、「一定の事実の発生」と「意思表示の場合」の2種類に分けることができます。

「一定の事実の発生」とは、従業員が亡くなられたり、定年を迎えた場合のことを指しており、当然ながらそれらの事実が発生した時点で退職となります。

今回のケースについては「意思表示の場合」に該当するもので、「使用者と労働者の合意」と「使用者または労働者の一方の意思の場合」に分けることができます。

「使用者と労働者の合意」があった場合には合意退職となりますが、通常「退職届」などによって意思表示をする場合には、もう一方の「使用者または労働者の一方の意思の場合」に該当します。

「労働者の意思」による場合には「辞職」と言うことになり、「使用者の意思」の場合には代表的なものとして「解雇」があります。

そのようなことからすると、今回のケースでは「意思表示の場合」であり、かつ、「労働者からの一方的な退職の意思表示」であると言えるでしょう。

「退職の意思表示」の法律上の手続きについて

労働者からの一方的な退職の意思表示をする場合には「辞職」にあたる訳ですが、この場合には法律によって手続きが定められています。

期間の定めのない雇用契約の場合には、「労働者は2週間の予告期間を置くことによっていつでも理由を要せずに雇用契約を解約することができる(民法627条2項)」と定められています。

よく就業規則などによって「退職を希望する場合には1か月前までに届出をする」旨の定めがされていますが、会社のルールとしては問題ないものの、法律上においては2週間が経過すれば自動的に退職となってしまう訳です。

つまり、効力の発生時期は、退職届などによって「会社を辞めたい」という意思表示が到達した時点となり、そこから2週間が経過すれば自動的に辞めることができるのです。

一方で、「合意解約の申込み」と言うことに関しては、労働契約を将来に向けて解約することについての申込みであり、会社が行うのが「退職勧奨」、労働者が行うのが「依願退職」となります。

このケースの場合は、一方だけの申込みだけでは十分ではなく、相手側の承諾があって初めて効力が発生します。

今回のケースでの実務上の対応

退職代行会社からの申し出が「辞職」なのか、「同意解約の申し入れ」なのかをハッキリさせておく必要があります。

「辞職」には強い意思表示が込められていると考えられており、「絶対に辞める」という意思表示であれば「辞職」に該当しますし、そうでなければ「合意解約の申込み」に該当します。

上記でご説明した通り、「辞職」であれば到達から2週間で自動的に退職となり、「合意解約の申込み」であれば相手側の承諾があって効力が発生します。

しかし、実務上は労働者保護の観点から、曖昧な場合は「合意解約の申込み」と理解するのが一般的となっています。

それは、労働者保護の観点から見ると、「辞職」であれば到達から2週間で自動的に退職となってしまいますが、「合意解約の申込み」であれば相手側の承諾があるまではいつまでも申込み自体を解約することが可能となるからです。

ちなみに「退職願」は「合意解約の申込み」として、また「退職届」は辞職に対する強い意思表示であると言われますが、実務上では労働者保護の観点から、曖昧な場合は「合意解約の申込み」と理解されることになるのです。

そのため、退職代行会社からの申し出に関しては、「退職の承認」という法律行為を会社側がしておく必要があるということが重要なポイントであると言えるでしょう。

○まとめ~退職代行会社・退職代行弁護士への対応

1. 退職代行会社からの連絡と弁護士からの連絡とでは対応は別となる。
2.退職代行会社の場合は、本当に本人の意思によるものかどうかを要確認。
3.弁護士の場合は、弁護士を窓口として退職手続きを行う。

冒頭からご説明した内容を踏まえると、退職代行会社からの申し出に対して、淡々と手続きを進めていくのではなく、本人にその意思を確認することが重要です。

また、退職にあたって「有給休暇の消化」や「残業代の請求」などといった条件については、退職代行会社とは一切交渉はしてはいけないということです。

そのような本人に代わって交渉にあたることができるのは、法律上において弁護士だけであると定められているからです。

弁護士法違反になりますので、退職代行会社とは交渉はしないということを徹底して頂きたいと思います。

ただ、退職代行弁護士の場合は、弁護士が本人の代理人として交渉することができます。

そのため、本人への意思の確認の必要はなく、手続きについても弁護士を窓口として退職手続きを行うことができます。

弁護士を窓口とする場合には、淡々と手続きを進めるようにし、余計なことはしゃべらないことが大切です。

会社側の言い分を伝えてしまうと、本人の代理人である弁護士としては「未払残業代の請求」など余計なことを誘発してしまう可能性があるからです。

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