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試用期間を巡るトラブルへの対処法~新規採用中は自由に解雇できる?

試用期間を巡るトラブルへの対処法~新規採用中は自由に解雇できる?

あなたの会社では新規採用にあたって「試用期間」 を設けているでしょうか。

「試用期間」 を設けている会社もあるでしょうし、特に意識していないという会社もあるでしょう。

試用期間を設けている場合、その期間は何か月でしょうか。
3か月でしょうか、6か月でしょうか。または1年間でしょうか。

ここでは試用期間を巡るトラブルへの対処法についてご説明していきます。

新規採用中は自由に解雇できる?

経営者に多い誤解として次のようなものがあります。

● 試用期間中は簡単に辞めさせることができると思っている
● 試用期間中に適性や能力を十分見極めてから、本採用するかどうかを決めたい
● 不適格と判断した社員を試用期間終了後、辞めさせる方法を知りたい

「試用期間はお試し期間だから自由に解雇できる」と思っていませんでしょうか。

このような考えに至る経営者の気持ちも理解はできますが、「試用期間はお試し期間」といった理解は会社にとって大きなリスクとなりますから十分注意が必要です。

特に誤解が多いのは、労働基準法において解雇予告について次のような定めがあるからではないでしょうか。

試用期間中であっても14日を超えたら、つまり15日目以降であると解雇予告が必要となります。

その一方で、14日以内であれば解雇予告が不要で、簡単に解雇ができるのではないかと誤解をしてしまいます。

これはあくまで手続き上の話であって、そもそも解雇が有効なのかどうかについては別の問題になってくるものです。

そのため、試用期間中だからといって、自由に解雇できる訳ではないということなのです。

試用期間とは

「試用期間」とはどのようなものなのか、法律的な性格について見ていきましょう。

試用期間とは、いわば従業員としての適格性を判断するためのテスト期間であると言えます。

ただし、試用期間を設けるか否かについては、あくまでも会社の判断によるものになります。

法律的な性格としては、試用期間中の労働関係は
【 解約権留保付きの労働契約 】
であると言われています。

これによって、「試用期間中にはいつでも解雇できる」と誤解してしまう方も多いのではないかと思います。

判例によりますと、

(三菱樹脂事件)は、留保解約権に基づく解雇は、試用期間が従業員の適格性判定期間であるため、 通常の解雇と比べて広い解約権が認められるとしつつ、 当該留保解約権の行使は、解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認されうる場合に許される

としています。

つまり「解約権留保付きの労働契約」としながらも、その権利を行使するためにはそれ相応の理由がなければならないことになります。

簡単には解雇できないということなのです。

また、補足情報として、募集時の明示事項の改正があります。

【改正情報】
平成30年1月1日施行の改正職業安定法により、労働者の募集時の明示事項に「試みの試用期間に関する事項」が追加。
(職安法5条の3、職安則4の2③)。

つまり試用期間を設ける場合には、
「試用期間の有無、試用期間があるときはその期間」
といった明示事項を守らねばなりません。

また、試用期間中と試用期間満了後の労働条件が異なるときは、それぞれの労働条件も明示しなければならないことになっています(職安則4の2⑥)。

例えば、試用期間中の賃金が下げられていて、試用期間満了後に通常の賃金になる場合などには、しっかりとその内容について明示しておかねばならないのです。

試用期間の長さは?

試用期間中の長さはどれくらいが妥当なのでしょうか。

試用期間中であれば、通常の雇用契約より解雇がしやすいのであれば、試用期間を長く定めたいと考える会社もあるでしょう。

しかし、それでは労働者があまりにも不利になってしまいます。

例えば、試用期間が2年や3年だったらどうでしょう。労働者にとっては、いつまで経っても不利な労働条件に置かれてしまうことになるのです。

判例でも異常に長い試用期間や、試用期間の延長は公序良俗に反し無効(民法90条)とされるケースが散見されています。

一般的には3カ月、長くとも6カ月程度ならば妥当な期間と言えるのではないかということです。

もちろんケースによっては1年を超える試用期間(試用期間の延長を含む)が設定されている場合もあるのですが、違法とされるリスクが高くなってしまいます。

試用期間中に解雇する場合は?

試用期間中の解雇は厳密に言えば「本採用の見送り」ということになりますが、その場合には予告が必要となります。

労働基準法には次のように定められています。

試用期間中であっても、解雇(本採用の見送り)には予告が必要であり、この場合、原則、30日前の予告もしくは30日分以上の平均賃金の支払いが必要になる(労働基準法第20条)。

なお、解雇の時期が試用期間開始から14日間の間に限り解雇予告は不要とされています(労働基準法21条4号)。

ただし、14日間以内であればどんな理由でも解雇できるわけではなく 、解雇するには合理的な理由が必要になります。

試用期間中の解雇が有効とされるケース

● 協調性がないなど、勤務態度が著しく悪い
● 遅刻や欠席が多く、職場の風紀を乱す
● 履歴書や職務経歴書に経歴詐称といった虚偽があった

試用期間中の解雇が有効とされるケースにはこのようなものがあります。

ただし上記に該当する場合であっても、客観的視点での判断が重要になります。

このようなケースがあったからといって、ただちに解雇できるというものではないのです。

例えば、「勤務態度が悪い場合」とはどのような状態を指しているのかについて就業規則の服務規律で明記しておかねばなりません。

また、この服務規律に反していることが、第三者から見ても明らかであることが必要です。

適性がないことを本人に伝えて指導をしているにも関わらず、改善される見込みがないといったことが第三者から見て明らかでなければならないのです。

こうした客観性に欠ける場合には、上記のケースに当てはまったとしても、本採用の見送り(試用期間中の解雇)は難しいといえるでしょう。

試用期間を巡るトラブルを回避するために

①明文化
②延長規定
③審査基準

試用期間を巡るトラブルを回避するポイントについて3点掲げてみました。順番にご説明していきましょう。

①明文化

経営者や採用担当者には、「試用期間」という制度の認識はあり、また試用期間を活用しようという意識も高いと感じています。

しかし「その定めが明文化されていないと効力を発しない」ということへの理解が不足しているケースが非常に多いということなのです。

もし規定が整備されていない場合、リスクを負うのは企業側になってしまいます。

そのため、人材の採用を行う前に、自社の規定が正しく整備されているかどうかを確認しておくことによって、トラブルを未然に防止することができるのです。

②延長規定

試用期間は一般的に「3カ月」とする会社が多く、しっかり見極めたいという場合には「6カ月」に設定されているケースが見受けられます。

しかし、当初設定していた試用期間ではどうしても適性が見極められないような場合は、試用期間を延長することができます。

ただし、試用期間の延長ができるのは、就業規則に規定をしてある場合に限られます。

したがって、 就業規則には必ず、試用期間の延長ができるといった「延長規定」を記載しておくことが大切です 。

試用期間を延長する際には、期間満了日までに十分な時間をあけて本人に通知するとともに、延長する具体的な理由についても説明するということは言うまでもありません。

なお、その場合でも、試用期間は1年以内であることが望ましいと考えられます。

③審査基準

「試用期間」とは、採用した人材が自社にマッチしているのかを判断できる期間でありますが、試用期間中の判断基準を設けていない企業がほとんどです。

仮に試用期間中の判断基準を設定しているとしても、労働者側に十分伝わっていないことが多く見受けられます。

ここにトラブルが生じる最大の原因になるのではないかと考えられます。

そのため、判断基準を明確にしておくことが大切です。

例えば、出退勤に関する基準を設ける、試用期間の間に必ず覚えるべき業務を用意する、仕事への取組姿勢を上司からヒアリングしておくなど、といったことになります。

期待通りの行動ができていない場合には、きちんと指導を入れると言うことです。

試用期間中にどのような社員になって欲しいのかを明示しておくことによって、本採用の基準が明確になり、トラブルを未然に防止することができるのです。

○まとめ

■試用期間とは社員の適格性を判断するテスト期間
■試用期間は3~6ヵ月間が妥当
■就業規則に規定をしておけば試用期間の延長も可能
(ただし、その場合でも1年以内が目安)
■試用期間中の解雇(本採用見送り)は、通常の解雇よりも基準は緩いものの、客観的・合理的な理由が必要。
■試用期間中にしっかりと評価・指導を行うことがトラブルの防止につながる

このようにみると、試用期間中であっても簡単に解雇できるというものではなく、通常の社員を解雇することとそれほど大きく変わらない行為であることが分かります。

ただし試用期間中の場合では、若干緩やかになると理解しておくといいのではないでしょうか。

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