会社組織は、多様な人材によって築かれています。そのため経営者や上司には、自身だけでなく従業員それぞれの個性を受け入れることが求められますが、むやみやたらになんでもそのまま肯定してしまうことにも危険性が潜んでいます。というのも、たとえばあまりにも協調性のない従業員をそのまま「個性」として放置してしまうと、ほかの従業員に害が及んだり、周りの士気が下がってしまったりすることがあるからです。
協調性がない、無断欠勤を繰り返す、ほかの従業員の迷惑になるような問題行動を起こすなど、もしかしたらこの記事を読んでいる方の部下や同僚にも「いっそ辞めてほしい」と思ってしまうような人がいるかもしれません。世間では、そういった従業員のことを「モンスター社員」と呼ぶことも多いです。
企業やほかの従業員の迷惑になるようであれば、もちろんなにかしらの対策を講じるべきですが、対処法によってはむしろ企業の方がハラスメントとして訴えられてしまう可能性も孕んでいます。当記事では、どのように対応すべきなのかを解説します。
モンスター社員とは

そのため定義がしっかり決まっているわけではないので、自社の問題社員がそれに当てはまるかどうか判断することが難しいかもしれません。「客観的に見て企業やほかの従業員に対して悪影響を与えたり、迷惑にあたるような問題行為を起こしたりする社員」くらいに留めておくとよいでしょう。
問題行為の例
①対人関係の問題
上司やほかの従業員と口論になったり、トラブルを起こしたりして問題を起こすケースです。基本的に、能力面において問題はないものの、協調性に著しく欠けているといった従業員が引き起こすことが多いといわれています。
もちろん意見の不一致などが原因で口論になる可能性はだれにでも考えられるので、一度のトラブルで問題社員だと判断するのではなく、普段から嘘をつくことが多い、周りとのコミュニケーション不足が原因で士気を下げる、あるいは生産性を下げる、といったことがないかどうか観察するようにしましょう。
②規律を守らない
無断欠勤や遅刻が多い、あるいは出社してもやる気がないことが見てとれ、業務を遂行する意思がないと判断できるケースです。
この場合、問題なのは規律を守れないということだけではなく、それに伴って業務が滞り、ほかの従業員に負荷が課されることでしょう。タスクをこなすために残業時間は増え、モチベーションの低下、場合によっては過労による体調不良にまで及ぶ可能性も考えられます。
③素行不良
ギャンブル依存症で多額の借金があるといった従業員にも注意が必要です。プライベートはあくまでも本人の自由に任せるべきであり、決して干渉すべきではないですが、ほかの従業員に金銭を借り、その人の迷惑になるといったことも考えられるためです。
恋愛関係においてもあくまでも当人同士の自由ではありますが、社内で複数の従業員と関係を持つ従業員がいる場合、そのいざこざが就業中に巻き起こることもあるかもしれません。また、そもそも相手が同意していない=セクハラであるケースも考えられます。もちろんセクハラに限らず、パワハラ、モラハラなどあらゆるハラスメントは企業から撲滅すべきです。
④問題社員・モンスター社員に共通する特徴
問題行為自体にはさまざまな内容がありえるでしょう。しかし、問題社員、もしくはモンスター社員だと見なされるほどの問題行為となると共通点が浮かび上がってきます。
繰り返しになりますが、会社という組織は従業員ひとりひとりによって築かれています。基本的に一人だけで完結できる業務はないと考えられるでしょう。そのため、だれかがミスをしてしまったとき、もしくはトラブルが発生してしまったとき、あるいは繁忙期などで業務量が一気に増えてしまったとき、従業員同士で協力し合って解決させることが可能です。
しかし、その協力体制を共に築くことができないのが問題社員、モンスター社員なのです。著しい協調性の欠如から周りのモチベーションを下げたり、素行の悪さからほかの従業員に迷惑をかけたり、無断欠勤を繰り返すことで同僚たちの業務量を増やしたり、同じチーム、ひいては企業全体に対して悪影響を及ぼすようであれば、その従業員は問題社員と見なしてよいかもしれません。
対策を講じる前に注意しておきたい点

異動や転勤を命じる場合
ただし、その異動や転勤に業務上の必要性が存在しない場合や対象となる社員の不利益が大きくなる場合は、その権限も認められないことがあるため、注意が必要です。
減給を行う場合
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。
引用元:労働基準法
つまり、問題となるような違反行為を行った社員に減給処分を下す際には、1回の違反行為に対して1日分の平均賃金の半額まで、また、その社員が複数回違反行為を行ったとしても1か月の賃金支給額の10%までしか減給できないと定められているので、事前に注意しておくようにしましょう。
解雇する場合
当然ながら、問題があるからといってすぐに解雇できるわけではありません。労働契約法第16条では、下記のように定められています。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用元:労働契約法
どのような場合の解雇が有効、または無効とされるのかは状況によっても異なるので一概には言及できませんが、むやみに従業員を解雇するような会社は、その事例自体が広まり、「従業員をすぐにクビにする会社」という悪しきレッテルを貼られてしまうことも考えられるので、ほかに方法がないか慎重に考えるようにしましょう。
問題社員に対する適切な対処法

規則・制度を見直す
事前に就業規則などにおいて「遅刻する場合は理由を問わず必ず事前に連絡する」と定めたり、具体的にどういうことをしたら・しなかったらどういう評価を受けるのか、また、そのときにどういった待遇変化があるのかなど、評価制度をきちんと設けたりすることで防げる可能性があります。
評価軸が可視化されていると従業員はモチベーションを保てるだけでなく、企業に対して信頼感を抱くことができるので、長い目で見ても企業の基盤を作ることに役立てることができるでしょう。
注意指導を行う
できれば口頭で注意するだけではなく、書面を渡し、きちんと内容を認識してもらうことが大事です。従業員に問題行為を理解してもらいやすくなるだけでなく、その後トラブルに発展することになった場合に企業を守るエビデンスにもなります。
またこのとき、ほかの従業員のいる場で注意指導しないように気をつけましょう。厳しい口調でなくても、周りが見ている中で特定の一人を叱責するのはパワハラと見なされかねません。とはいえ、不用意に近い距離感で追及したり、和ませるつもりでプライベートに立ち入った冗談を言ったりするとセクハラとも取られかねないので、重々注意が必要です。
ポイントは不必要なことは言わない、しないこと。必要以上に責めない、触れない、馴れ馴れしくしないなど。従業員のどういった態度が企業やほかの従業員の迷惑になっているのかを認識してもらい、どう改善していくのか一緒に考えることが大事です。
問題社員、モンスター社員への対応はとても難しいですが、あまり一人にばかり手を焼いていると、それもまたほかの従業員から不信に思われたり、監督不行き届きで業務が立ち行かなくなったりすることに繋がりかねないので、自社だけで解決しようとするのではなく、社労士へ相談してもよいでしょう。
【関連記事はこちら】