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新型コロナウイルスに伴う賞与の減額や不支給について徹底解説!

新型コロナウイルスに伴う賞与の減額や不支給について徹底解説!

緊急事態宣言の解除に伴って、少しずつ経済活動が戻りつつあります。

しかし、コロナ前の状況に戻るには、まだまだ時間が必要ではないかとも言われています。

そのため、企業の業績悪化や倒産に至るケースも増えており、今後もさらなる経営に与える影響が懸念される状況にあります。

そのような中で、6月7月を迎える頃には、賞与の支給が行われる時期になります。

企業の中にはこのような状況の中で、

「このままでは夏のボーナスが払えない…。」
「賞与の支給はどうすれば良いのだろう…」

と不安に感じる経営者も多いのではないでしょうか。

そこでここでは、新型コロナウイルスによる業績悪化に伴う賞与の減額支給や不支給などについて、事例形式で詳しくお伝えしていきます。

○賞与の支給に関する問題~ケーススタディ

【質問①】賞与の査定~休業・有給休暇の日数の扱いについて

当社は今般のコロナの影響で、営業時間を短縮したことにより、従業員には一部、休業をさせたが、賞与の査定にあたって、休業した日数は勤務していないものと扱うことは可能か?

また、休業が嫌という従業員には有給休暇を取得してもらったが、有給休暇の日数は勤務していないものと扱うことは可能か?

■回答
休業の場合に、会社が社員に対して支払う賃金は『平均賃金の6割以上』であると法律で定められています。

そのため、社員にとって休業手当では満額の賃金を受け取ることができませんので、有給休暇を取得したいという社員も多かったのではないでしょうか。

上記の質問の答えとして、結論をお伝えすると下記の通りです。

休業は〇
有給は×

「休業」の場合には勤務はしていませんので、賞与の査定にあたって休業した日を勤務していないものとして扱うことは可能であると考えられます。

しかし「有給休暇」の取得をもって賞与の査定を下げてしまうのは、取得を抑制する不利益な取扱いとして、公序良俗に反し無効とされてしまう可能性があります。

そのため、有給休暇の取得によって査定を悪くしてしまうのは難しいのではないかと考えられます。

ただ、賞与はこれだけではなく、さまざまな査定の要素があり、トータルとしてこの金額になった、と提示されるものです。

査定の内容については、従業員にとって見えにくい部分になるのではないかと考えられるでしょう。

【質問②】賞与の支給~退職予定者に対する取扱いについて

当社は、就業規則に6月に賞与を支給すると定めているが、ある従業員から、先日(5月半ば)、7月末をもって退職したい、退職日まで有給休暇を消化したいという話があった。

会社として、退職予定の者に対しては賞与を支給しない扱いとしたいが、それは可能か?

■回答
多くの会社では「支給日在籍要件」と呼ばれる、「賞与の支給日に在籍していない場合には賞与を支給しない」といった旨の規定が定められているのを見かけます。

例えば、6月の賞与支給であれば、前年の10月から3月までの実績に基づいて査定されることになり、支給日の6月に在籍している社員に対して支払われます。

そのため、会社のルールとして、支給日の6月に在籍しなければ、支給しないといった扱いについては問題ありません。

しかし、今回のケースについては6月の支給日には有給休暇を消化しているだけであり、在籍していない訳ではありません。

そもそも賞与にはいくつかの性質がありますので、将来の労働への意欲向上策という観点で見れば、退職予定者に対して減額することはありうるでしょう。

しかし、「功労報償」という面で見てみれば、不支給というのは違法になると考えられます。

では、どこまで減額できるかという点については、さまざまな査定方法にもよりますが、裁判例においては「2割減まで」としたものがあります。

トラブルを避けるためには、極端な減額は難しいのではないかと考えられます。

【質問③】賞与の返還条件~退職者に対する違約金について

当社は、就業規則に6月に賞与を支給すると定めているが、今回のコロナ騒ぎで、経営が厳しくなったものの、何とか6月の賞与は例年通り支給できそうな状況である。

しかし、直ぐに退職する従業員には賞与を支給したくないので、賞与支給日から3ヶ月以内に退職した場合には賞与を返還させることを条件として支給したいと考えているが、可能か?

■回答
労働基準法16条(損害賠償の予定)において次のように定められていますので、この内容については定めることができません。

労基法16条
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

そのため、上記の「賞与の返還」については「損害賠償額を予定する契約」となってしまうことが考えられます。

【ワンポイント解説】賞与とは何か

「賞与」とは、月例賃金とは別に会社の業績や個人の業績に応じて、一時金として支給されるもののことを指しています。

基本的には、支給対象期間の勤務に対応する賃金ということになりますが、そこには次のような意味合いが含まれていると考えられます。

① 功労報償的意味
② 生活補填的意味
③ 将来の労働への意欲向上策としての意味

つまり会社への貢献度といった性格だけではないと捉えることができるのです。

「労働協約」「就業規則」等で、賞与の支給時期と額の決定方法などの定めがあり、これに基づいて支給されている場合には、労働基準法上の「賃金」に該当します。

しかし、その支給の有無や額などが使用者の裁量に委ねられている場合には、任意的・恩恵的な給付となるために、労働基準法上の「賃金」には該当しないとされているのです。

もともと賞与は必ず支払わねばならないものではなく、就業規則の相対的必要記載事項と呼ばれているものです。

賞与の支給を行う場合においては、その計算方法や支給時期などについて、誤解のないように規定しておかねばならないと、労働基準法上で定められているのです。

つまり、就業規則での規定の仕方が大きなポイントになると言えるでしょう。

就業規則の事例①

第●条 会社は、会社の業績、従業員各人の勤務成績等を勘案し、支給日に在籍する従業員に対し、賞与を支給する。
 2 賞与の支給対象期間及び支給月は以下のとおりとする。

支給対象期間 支給月(原則)
1月1日~6月30日 6月
7月1日~12月31日 12月

このように定められている場合、業績悪化を理由として、賞与を不支給とすることは可能なのでしょうか。

しかし、「支給する」とある以上は、労働基準法上において「賃金」と扱われることになりますので、勝手に不支給とすることはできません。

では、就業規則をどのように変えればいいのでしょうか。

「支給する」ではなく、「することがある」にする、あるいは「支給しないことがある」を追記して頂きたいと考えます。

賞与は、月例賃金と異なっており、削減は容易にできますので、柔軟に運用すべきでしょう。

ただ、「労働条件の不利益な変更」になりますので、トラブルを避けるために慎重に行う必要があります。

就業規則の事例②

第●条 会社は、毎年2回、支給日に在籍する従業員に対し、2ヶ月分の賞与を支給する。
2 賞与の支給対象期間及び支給月は以下のとおりとする。

支給対象期間 支給月(原則)
1月1日~6月30日 6月
7月1日~12月31日 12月

この場合、業績悪化を理由として、6月の賞与を減額したり、不支給とすることはできるのでしょうか。

このケースにおいても、「2ヶ月分の賞与を支給する」と規定してある以上、勝手に不支給とすることはできません。

上記のケースと同様に、「することがある」にする、あるいは「支給しないことがある」を追記しておく必要があります。

では、減額や不支給についての同意を取ることができれば可能なのでしょうか。

このようなケースにおいても、規定してある以上、就業規則を下回る合意は無効となってしまいます。

社員のほうから放棄してもらう必要があります。

○まとめ~不安な方は社労士に一度相談してみては?

コロナ禍での業績悪化に伴う賞与の支給について詳しくお伝えしました。

ポイントとしては、下記の通りとなります。

1. 就業規則にどう書いてあるかによって運命が分かれる。
2. 賞与の削減は、法的にはハードルが低いので多用すべし。
3. 就業規則の変更には注意が必要(不利益変更になる)。

売上が落ちたり、業績が悪化しているような場合には、退職する社員に対して賞与を支給したくないという経営者は多いのではないでしょうか。

賞与の支給については、「就業規則」に書かれている内容によって大きな影響を及ぼすことが、ご理解いただけたのではないでしょうか。

しかし、月例賃金に比べて、法的なハードルは高いとは言えませんので、柔軟な運用を行うことをおすすめします。

ただ、変更を行う際には不利益変更となりますので、トラブルに対して十分な注意が必要です。

賞与の支給や就業規則などについてお困りの場合には、労働問題に精通した社労士に相談することをおすすめします。

こうべみなと社労士オフィスでは、企業の労働問題に特化してサポートを行っております。

まずは、当事務所にお気軽にご相談ください。

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