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あっせん事例から学ぶ労働トラブル予防【解雇編】

あっせん事例から学ぶ労働トラブル予防【解雇編】

こんにちは、神戸市三宮のこうべみなと社労士オフィスです。
最近相談の多い労働トラブルの解雇に焦点をあててご説明させて頂きます。

事案(平成30年)

申請人は、正社員として勤務していたが、社長から、業績不振を理由に解雇された。解雇理由が業績不振とのことであるが、他の事務所に応援で勤務することもあり、配置転換が可能ではないかと考えているため、解雇の理由に納得できない。
会社に対して復職又は復職ができないのであれば解雇による経済的・精神的損害に対する補償金として60万円の支払いを求めたいとしてあっせんを申請した。
(あっせんのポイント・結果)
・ あっせん委員が双方の主張を聞いたところ、被申出人は、解雇理由は事業場の業績不振により、申出人を配置転換すると配置転換先の労働者が余剰となるということもあるが、申出人は業務への積極性がなく、業務を選ぶことがあるため、勤務を継続してもらうことは困難だとして、解雇の正当性を主張した。
・ これを受けて、あっせん委員が被申請人に解雇の正当性について判断することはできないが、迅速な解決に向けて歩み寄りを促したところ、解雇とはなるが、解決金として40万円を支払うことで合意が成立し、解決した。

事案(平成29年)

申請人は、正社員として入社したが、勤務開始当初から業務の引継ぎ時間が短く、業務内容を教えてくれる人もいない状況で勤務を行っていたところ、社長から能力不足を理由に解雇された。業務の引継ぎがされていないにもかかわらず、責任の重い仕事を急に任され、精神的に苦痛であったが努力していたため、会社に対して解雇による経済的・精神的損害に対する補償金として60万円の支払いを求めたいとしてあっせんを申請した。
(あっせんのポイント・結果)
・ あっせん委員が双方の主張を聞いたところ、被申請人は、当該業務ができるということで申請人を雇用したものであり、引継ぎも業務経験者用の引継ぎを行い、基本的な業務処理の教育も行ったが、勤務を継続してもらう能力に達していなかったことを理由に、解雇の正当性を主張した。
・ これを受けて、あっせん委員が被申請人に対し、教育の記録等はなく事実関係は判断できないが、迅速な解決に向けて歩み寄りを促したところ、解決金として30万円支払うことで合意が成立し、解決した。

事案(平成28年)

申請人は、試用期間1か月のパート労働者として勤務を開始したが、勤務開始当初から、体調を崩し、数日間欠勤したところ、勤務開始5日目に、体調管理ができていないとの理由で解雇された。
継続雇用を希望したが応じてもらえなかったことから、復職はかなわないと考えているが、インフルエンザに罹患するなどやむを得ない事情により欠勤したものであり、補償金として8万円の支払いを求めたいとしてあっせんを申請した。
(あっせんのポイント・結果)
・ あっせん委員が双方の主張を聞いたところ、被申請人は、試用期間中であること等の理由により解雇の正当性を主張した。
・ これを受けて、あっせん委員が、被申請人に対し、試用期間は1か月間とされている以上は、その期間を通じ労働者の適性を見極めるべきであり、その期間に満たない時期の解雇は裁判となった場合に問題視される可能性があること等を伝え、歩み寄りを促したところ、解決金として5万円を支払うことで合意が成立し、解決した。

事案(平成27年)

申出人は正社員として勤務していたが、ある日、即日解雇を言い渡され、その日に解雇予告手当の支払いを受けた。後日、送付されてきた退職証明書には、解雇理由として「職務中の携帯電話の不適切使用」などが記載されており、他の者も同様に仕事中に携帯電話を使用しているのに、自分だけがそのような理由で解雇されることに納得がいかない。
このため、解雇を撤回するか、もしくは経済的損失・精神的苦痛に対する補償として賃金10か月分相当の200万円の支払いを求めたいとしてあっせんを申請した。
(あっせんのポイント・結果)
・あっせん委員が双方の主張を聞いたところ、被申請人は、申請人が業務中に頻繁に携帯メールのやりとりをするなど目に余る行為があった。申請人の復職には応じられないが、問題の解決を望んでおり、解決金として申請人の賃金3か月分相当の 50 万円を支払う考えを示した。
・これを受けて、あっせん委員が、申請人に対し、解決のために金額の譲歩の考えを確認したところ、80 万円程度であれば譲歩可能である旨考えが示された。
・あっせん委員が、再度、被申請人に解決のための譲歩を促したところ、被申請人は申請人が提示した解決金額について同意したため、解決金として 80万円支払うことで合意が成立し、解決した。

事案(平成26年)

申請人は、正社員として勤務していたが、社長から、「仕事に対するやる気が見えない。」と言われ、解雇を通告された。
事前に注意や指導がなく、いきなり解雇されたため、納得がいかない。
このため、経済的・精神的損失に対する補償金として、100 万円の支払いを求めたいとしてあっせんを申請した。
(あっせんのポイント・結果)
・あっせん委員が双方の主張を聞いたところ、被申請人は、解雇予告手当を支払ったと主張したものの、あっせん委員の調整の結果、解決金として 40万円支払う考えを示した。
・申請人は提示された解決金額について同意したため、解雇予告手当とは別に解決金として 40 万円を支払うことで合意が成立し、解決した。

事案(平成25年)

申請人は、数年前から1年契約の期間契約社員として勤務していたが、社長から、一方的な解雇通告を受けた。一方的な解雇通告に対し納得がいかないため、雇用継続を求めるも認められなかった。その後、残りの契約期間分の補償金の支払いを求めるも、認められなかった。
このため、補償金として残りの契約期間分の賃金相当額 120 万円の支払いを求めたいとしてあっせん申請したもの。
(あっせんのポイント・結果)
・あっせん委員が双方の主張を聞いたところ、被申請人は解雇の事実はなく、申請人自らが退職を申し出たと主張していたものの、あっせん委員より、そのような主張をするためには退職届の提出を求める等の対応が必要であった旨を伝え、解決を促したところ、被申請人は、解決金として10万円を支払う考えを示したもの。
・申請人は提示された解決金額について同意したため、解決金として10万円支払うことで合意が成立し、解決した。

事案(平成24年)

申請人は、作業の配置を担当する上司より「枠がないので辞めてくれ」と言われ解雇された。解雇の理由について説明を求めるも、会社側は解雇ではないと主張したため、その主張に納得できない。
このため、謝罪と精神的損害に対する補償金として 25 万円の支払いを求めたいとしてあっせん申請したもの。
(あっせんのポイント・結果)
あっせん委員が双方の主張を聞き、調整を図ったところ、解決金として 10 万円を支払うことで合意が成立し、解決した。

事案(平成23年)

申請人は、5年前から○○会社△△営業所の正社員として勤務していたが、業績不振を理由に△△営業所が閉鎖となり、解雇を通告された。
業績不振というが、近隣の地域の他の営業所に配置転換となった同僚が何人もいて、申請人は、自分が整理解雇される理由がわからず、また解雇に関する説明を求めても「あなたに働いてもらう場所がないから」と言われるだけであった。
申請人としては、○○会社が解雇を回避する努力を十分に行ったとは思えず、経済的損失・精神的苦痛に対して補償金として、半年分の給料を求めたいとしてあっせん申請したもの。
(あっせんのポイント・結果)
あっせん委員が双方の主張を聴き、当事者間での調整を図ったところ、解決金として25万円を支払うことで合意し、解決した。

予防策

・解雇にあたっては、整理解雇4要素(経営上の必要性、解雇回避の努力、人選の合理性、労使間での協議)をすべて満たす必要がありますが、ほとんどの場合、この条件を満たすことが難しいです。
・そのため、従業員とよく話し合って、それでも今回の事例のように合意しない場合には、解雇予告手当以外に示談金(退職金に加算)を準備する必要があります。
・示談金を支払う場合は、書面で合意書を交わし、現金で支払う場合は、領収書をご準備下さい。

(注)紛争調整委員会によるあっせんとは

あっせんとは
紛争当事者間の調整を行い、話し合いを促進することにより、紛争の解決を図る制度です。
紛争当事者の間に、公平・中立な第三者として労働問題の専門家が入ります。双方の主張の要点を確かめ、双方から求められた場合には、両者に対して、事案に応じた具体的なあっせん案を提示されます。

紛争調整委員会とは
弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家により組織された委員会であり、都道府県労働局ごとに設置されています。この紛争調整委員会の委員の中から指名されるあっせん委員が、紛争解決に向けてあっせんを実施します。

紛争調整委員会によるあっせんの特徴
1手続きが迅速・簡便
・長い時間と多くの費用を要する裁判に比べ、手続きが迅速かつ簡便。
2専門家が担当
・弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家である紛争調整委員会の委員が担当
3利用は無料
・あっせんを受けるのに費用は一切かからない
4合意の効力
・紛争当事者間であっせん案に合意した場合には、受諾されたあっせん案は民法上の和解契約の効力を持つ
5非公開(秘密厳守)
・あっせんの手続きは非公開であり、紛争当事者のプライバシーは保護される
6不利益取扱いの禁止
・労働者があっせんの申請をしたことを理由として、事業主が労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されている

対象となる紛争
・労働条件その他労働関係に関する事項についての個別労働紛争が対象
・解雇、雇止め、配置転換・出向、昇進・昇格、労働条件の不利益変更などの労働条件に関する紛争
・いじめ・嫌がらせなどの職場環境に関する紛争会社分割による労働契約の承継、同業他社への就業禁止などの労働契約に関する紛争
・その他、退職に伴う研修費用の返還、営業車など会社所有物の破損についての損害賠償をめぐる紛争など

対象とならない紛争
・労働組合と事業主の間の紛争や労働者と労働者の間の紛争 募集・採用に関する紛争
・裁判で係争中である、または確定判決が出ているなど、他の制度において取り扱われている紛争
・労働組合と事業主との間で問題として取り上げられており、両者の間で自主的な解決を図るべく話し合いが進められている紛争など

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